1963年(昭和38年)に空手道の初心者向けに『空手道の楽しみ方』や『正統 空手道入門』を出版、正しい空手道の学び方を世に問うた。また、NHKから請われ1964年2月1日放映の教育テレビ番組「現代の記録・精神復興」に出演し、サンチンの指導と形セーパイを演武した。このころ日本武道館の建設に着手され、「人づくり」の問題が高まっていた。日本武道の精神的なものを模索しようとしたのがこの番組の目的であった。その後、私は1966年(昭和41年)に東京・国立市に道場を構え空手道の指導に本格的にあたった。
私の指導理念は、師父宮城長順の指導法と空手道精神を基礎に、空手道本来の伝統性を維持しつつ、同時に教育的・体育的観点から身体のもつ攻防の技を自在に体得できるようにすることである。
空手道が全国的に普及したとはいえ、昨今、空手道の真の伝統性が失われ、いわゆる「競技空手」に終始した指導が見受けられるのは誠に残念である。最近は「形試合」も行われるようになったが、形の意味がわからずに演じられていたりして、形の乱れが目に付くものもある。したがって試合の審判方法と各流派の形についての研究をもっと真剣に行うべきだと思う。「形に始まり形に終わる」という空手道修行の警句を忘れてはならない。